
「うつ病で働けなくなってしまった……生活費はどうすればいい?」 「発達障害や統合失調症でも、障害年金はもらえるの?」
精神疾患で療養中の方にとって、経済的な不安は病状にも悪影響を及ぼしかねません。実は、精神疾患も**「障害年金」**の受給対象となる可能性があります。
この記事では、精神疾患で障害年金を受給するための**具体的な条件(基準)**や、病気ごとの認定事例を分かりやすく解説します。 審査期間や金額の目安、申請のポイントもしっかり押さえて、生活の安定に向けた一歩を踏み出しましょう。

【30秒でわかる】精神疾患の障害年金ポイント
- 対象:うつ病、統合失調症、双極性障害、発達障害、てんかん、知的障害など。
- 受給要件:①初診日の特定、②年金の納付実績、③障害認定日において等級に該当していること。
- 金額:障害基礎年金(1級・2級)または障害厚生年金(1級〜3級)によって異なる。
- 注意点:「障害者手帳」の等級と「障害年金」の等級は別物(連動しない)。
1. 精神疾患で障害年金をもらうための3つの条件
精神疾患があるからといって、自動的に年金がもらえるわけではありません。受給するためには、以下の3つの要件すべてを満たす必要があります。
(1) 初診日要件
「障害の原因となった病気やケガについて、初めて医師の診療を受けた日(初診日)」において、国民年金または厚生年金に加入している必要があります。 ※20歳前に初診日がある場合は、年金制度に加入していなくても対象となります。
(2) 保険料納付要件
初診日の前日において、一定期間以上の年金保険料を納めている(または免除されている)必要があります。未納が多いと受給できない可能性があるため、ねんきん定期便などで確認が必要です。
(3) 障害認定日要件
原則として、初診日から1年6ヶ月経過した日(障害認定日)において、国が定める障害等級(1級〜3級)に該当している必要があります。
2. 精神障害の等級と支給金額の目安
精神疾患における障害の程度は、主に「日常生活能力」や「労働能力」によって判断されます。
等級の目安(精神障害の場合)
| 等級 | 状態の目安 | 対象となる年金 |
| 1級 | 「ほぼ寝たきり」の状態 活動の範囲がベッド周辺に限られ、常時介助が必要。 | 障害基礎年金 障害厚生年金 |
| 2級 | 日常生活に著しい制限がある状態 家事や身の回りのことが一人では難しく、援助が必要。 | 障害基礎年金 障害厚生年金 |
| 3級 | 労働に制限がある状態 日常生活は概ね自立しているが、フルタイム就労などが難しい。 ※初診日に厚生年金加入者のみ対象 | 障害厚生年金のみ |
支給金額(令和6年度参考)
金額は加入していた年金制度や家族構成によって異なります。
- 障害基礎年金(1級): 月額 約85,000円 + 子の加算
- 障害基礎年金(2級): 月額 約68,000円 + 子の加算
- 障害厚生年金: 給与額や加入期間に応じた額(3級は最低保証額あり)
3. 【病名別】精神疾患の症状と障害年金の認定傾向
精神疾患は、病名によって現れる症状や日常生活への影響が大きく異なります。障害年金の審査では、単に病名だけでなく、**「その症状によって日常生活や労働にどのような支障が出ているか」**が具体的に評価されます。
ここでは、代表的な疾患ごとの症状の特徴と、障害年金の受給傾向について詳しく解説します。
うつ病・双極性障害(躁うつ病)
これらは「気分(感情)障害」に分類され、気分の波が生活に大きな支障をきたす病気です。
症状と特徴
- うつ病:一日中気分が落ち込む、何をしても楽しめない、眠れない(または眠りすぎる)、食欲がない、疲れやすい、自分を責める、といった状態が長く続きます。重症化すると、身の回りのことが一切できなくなったり、「死にたい」という気持ち(希死念慮)が現れたりすることもあります。
- 双極性障害(躁うつ病):うつ状態に加え、気分が異常に高揚する「躁(そう)状態」や、軽い「軽躁(けいそう)状態」を繰り返します。躁状態では、活動的になりすぎる、睡眠時間が短くても平気、浪費や無謀な行動が増える、怒りっぽくなるなどの症状が見られます。本人は調子が良いと感じていても、周囲とのトラブルを招き、社会生活に大きな支障が出ることがあります。
障害年金 受給のポイント
- 治療抵抗性と長期化:適切な薬物療法や精神療法を十分に行っても症状が改善せず(治療抵抗性)、長期間にわたって就労や日常生活(食事、入浴、金銭管理、通院など)が困難な状態が続いていることが認定の鍵となります。
- 日常生活能力の評価:「気分や意欲の変動が激しく、継続的な就労ができない」「身の回りのことを家族に頼りきりである」など、具体的な生活の困難さを診断書や申立書で示す必要があります。
- 注意点(神経症との関係):適応障害や不安障害(パニック障害など)といった「神経症」は、原則として障害年金の対象外です。ただし、症状が重く、医師によって**「うつ病」や「精神病性障害」の病態を示している**と診断された場合や、うつ病を併発している場合は、認定の対象となる可能性があります。
統合失調症
脳の機能異常により、考えや気持ちがまとまりにくくなる病気です。主に「陽性症状」と「陰性症状」が現れます。
症状と特徴
- 陽性症状:現実にはないものが見えたり聞こえたりする(幻覚・幻聴)、ありえないことを信じ込む(妄想)、話のつじつまが合わない、興奮して暴れるなど、健康な時にはない状態が現れます。
- 陰性症状:陽性症状が落ち着いた後に見られることが多く、感情の起伏が乏しくなる、意欲がわかない、集中力が続かない、人との関わりを避けて引きこもる、思考力や判断力が低下するなど、本来あった機能が失われたような状態になります。
障害年金 受給のポイント
- 陰性症状による生活への影響:審査では、幻覚や妄想といった目立つ陽性症状だけでなく、無気力や引きこもりといった陰性症状によって社会生活がどれだけ制限されているかが重視されます。
- 具体的な困難さの証明:「意欲低下により入浴や着替えができない」「対人恐怖があり一人で外出できない」「思考力低下で簡単な作業も継続できない」など、具体的な生活上の支障を医師に伝え、診断書に反映してもらうことが重要です。
- 病識の欠如:ご自身が病気であるという認識(病識)が薄い場合、通院や服薬を中断してしまいがちです。適切な治療を継続していないと認定が難しくなるため、周囲のサポート状況も評価の対象となります。
発達障害(ADHD、ASDなど)
生まれつきの脳の機能障害により、行動や対人関係などに特性が現れるものです。
症状と特徴
- ADHD(注意欠如・多動症):不注意(忘れ物が多い、集中が続かない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつくとすぐ行動する、順番を待てない)などの特性があります。仕事でミスを繰り返したり、対人関係でトラブルになったりすることがあります。
- ASD(自閉スペクトラム症):コミュニケーションの苦手さ(場の空気が読めない、言葉の裏が理解できない)、強いこだわり(手順や習慣を変えられない、特定の興味に没頭する)、感覚過敏(音や光に極端に敏感)などの特性があります。集団行動が苦手で、社会生活に困難を感じることが多いです。
障害年金 受給のポイント
- 就労・日常生活への支障:知的障害を伴わない場合でも、上記の特性によって「対人関係が築けず職場を転々とする」「こだわりが強く臨機応変な対応ができない」「不注意によるミスで業務が遂行できない」など、就労や日常生活に著しい支障があれば認定の対象となります。
- 初診日の特例:発達障害は生まれつきのものなので、初診日は原則として**「生まれた日」**とみなされます。そのため、20歳になる前に医師の診断を受けた場合は、20歳到達時を障害認定日として申請します(20歳前傷病による障害基礎年金)。20歳を過ぎてから初めて受診した場合は、その受診日が初診日となります。
- 二次障害の考慮:発達障害の特性による生きづらさから、うつ病や適応障害などの二次障害(二次的な精神疾患)を併発しているケースも多く、その場合は併発した症状を含めて総合的に評価されます。
てんかん
脳の神経細胞が過剰に興奮することによって、発作を繰り返す慢性の脳疾患です。
症状と特徴
- 発作の種類:突然意識を失って倒れ、手足が硬直したり震えたりする「強直間代発作(大発作)」や、意識が短時間途切れる「欠神発作」、意識が曇って無意識に動き回る「複雑部分発作」など様々です。
- 生活への影響:発作そのものの危険性に加え、「いつ発作が起きるかわからない」という不安から、車の運転、高所作業、危険物を扱う作業などが制限されます。これにより、就労の選択肢が狭まったり、日常生活に大きな制約が生じたりします。
障害年金 受給のポイント
- 発作の頻度と重症度:適切な抗てんかん薬を服用していても発作が抑制できない場合(難治性てんかん等)、その頻度と程度が審査の基準になります。例えば、「意識障害を伴う発作が年に何回あるか」などが等級判定の目安となります。
- 労働能力の喪失:単に発作の回数だけでなく、発作が起きていない時の精神神経症状や、認知機能の低下なども考慮されます。特に「発作のリスクにより就労が著しく制限されている状態」が評価されます。
- 診断書の記載:医師の診断書には、発作のタイプ(A:意識障害あり、B:意識障害なし等)や頻度、服薬状況を正確に記載してもらう必要があります。発作がない時期の状態についても詳細に伝えることが大切です。
4. 障害者手帳と障害年金は「別物」です
よくある勘違いとして、「障害者手帳が3級だから、年金はもらえない(年金は2級以上が必要な基礎年金の場合)」というものがあります。
- 障害者手帳:自治体が交付。福祉サービスや割引を受けるためのもの。
- 障害年金:国(日本年金機構)が支給。生活費を補填するためのもの。
これらは全く別の制度であり、等級の判定基準も異なります。 「手帳は3級だけど、年金は2級が通った」というケースもあれば、その逆もあります。手帳の等級だけで諦めずに申請を検討しましょう。
関連記事:障害者手帳のメリット・対象者・申請方法を解説—
5. 申請方法と審査の流れ
申請は複雑ですので、流れを把握しておきましょう。
- 初診日の確定:年金事務所で加入状況を確認します。
- 診断書の依頼:医師に「障害年金専用の診断書」を作成してもらいます。普段の診察で伝わりきれていない「生活の困難さ」をメモにまとめて医師に渡すとスムーズです。
- 病歴・就労状況等申立書の作成:発病から現在までの経過を自分で(または家族が)記述します。
- 提出:年金事務所または市区町村役場へ提出します。
- 審査・決定:約3ヶ月〜6ヶ月程度で結果が通知されます。

6. 障害年金が認められなかった場合(不支給)の対処法
残念ながら「不支給」となった場合でも、諦めるのはまだ早いです。
審査請求(不服申し立て)
結果通知が届いてから3ヶ月以内であれば、「審査請求」を行うことができます。
- 診断書の内容が実態より軽く書かれていなかったか?
- 日常生活の困難さが正しく伝わっていたか?これらを検証し、追加資料を出して再審査を求めます。
再申請
症状が悪化した場合などは、改めて一から申請し直すことも可能です。
まとめ:一人で悩まず専門家に相談を
精神疾患での障害年金申請は、目に見えない障害である分、「診断書」と「申立書」の内容が非常に重要になります。
体調が優れない中で複雑な手続きを行うのは大きな負担です。 年金事務所の窓口はもちろん、病院のソーシャルワーカーや、障害年金を専門とする社会保険労務士(社労士)への相談も検討してみてください。
経済的な基盤を整えることは、精神的な安定と治療への専念につながります。制度を正しく理解し、活用していきましょう。
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